■屋久島の思い出（１） 　「あまのがわ」という映画の撮影で、１０日間ほど屋久島に行かせていただいた。 　屋久島は、昔から行ってみたかった憧れの場所だった。１０年ほど前、新宿の居酒屋でアルバイトをしながら劇団員として三十路を越え、くすぶりまくり、今後の自分の人生について悩み行き詰まっていた時に、屋久島の手付かずの自然や神秘的な空気から何かヒントをもらえるのではないかと、本気で屋久島行きを考え、いろいろと調べた。結局、アルバイトの休みが取れなかったり、資金面の部分などで断念し、知り合いの剛クンがいる奈良県に夜行バスで行き、天ぷらを食って帰ってきた。

　そんな未だ見ぬ屋久島の地に、お仕事で行かせていただける。すごくうれしかったのはもちろんだが、何よりも屋久島を訪れることで、自分の中で眠っているチカラが開花するのではないか。そのチカラとは、もしかすると映画俳優としてのとんでもない才能かもしれない。いや、お笑い芸人としての新たな境地かもしれない。妙な期待感を持ちながら、僕は生まれて初めて、屋久島に上陸した。 ...